「あ~疲れた~」
「お疲れ様。何したんだ今度は」
「何もしてない」
「何もしてなかったらあんな呼び出し受けないだろ」
「何もしてない!何か知らないけど色々俺のせいになってたの!」
「ああごめんごめん、とりあえず昼食べような」
「……征十郎何食べたん?」
「まだ食べてない」
「え!待っててくれたの!?」
「うん」
「だいすき……」
「はいはい。それでどれにするんだ?」
「和風煮込みハンバーグがいい」
「しぐれ煮じゃなくていいのか」
「それも食べたいけど煮込みハンバーグの方が食べたい」
「じゃあ俺がしぐれ煮にするよ」
「えっ」
「俺もハンバーグ食べたいから半分にしよう」
「や、優し~!さすがスパダリ日本代表……いっぱいちゅき……」
「いよいよ日本代表か」
「次は東南アジア代表ですよ」
「はは、どんどん規模が無駄にでかくなるな。で、なんで怒られたんだ?」
「なんか理科準備室に無断で入って器具いじっただろって。冤罪だから全面抗議したらすごい長引いた」
「お疲れ様。先生は納得したのか」
「させたし謝らせた。もうなんかあればすーぐ俺だと思ってさぁ、一方的に捲し立ててくるから俺も捲し立て返した」
「また英語でか」
「うん。ジョン(※英語リスニング担当教師)がマイルドに通訳してた」
「お前はまた……日本語じゃなかったら何言ってもいいと思って」
「だって言いたいことはちゃんと伝えなさいって母さんに言われてるから」
「ジョンには怒られなかったのか」
「にこにこしながら肩ぽんぽんってされた」
「ああそうか。あまり仲良くないんだったな」
「そうそう。ジョンは人の話聞かない人間はみんな地獄に落ちろって思ってるらしいから」
「意外と過激なんだな。……ほら半分」
「ありがと~、征十郎のはこっちな」
「いいのか舞茸」
「ん、舞茸好きでしょ」
「ありがとう。そういえば怖い夢見たって言ってただろ、どんな夢だったんだ」
「あ~、あのねぇ、俺またデパートでアルバイトしててさ。あの和菓子のとこ」
「ああ、大福が美味しかったとこ」
「うん、そこでまたバイトしてて、結構忙しくばたばたしてるときに外から物とって来てって言われて外に行くんだけど、すぐ横が森でさ」
「うん」
「その森の中に寺があるんだけど、そのあたりがなんかざわざわしてんの。近所の人とかがどっかに電話したり、様子見に行ったりしてて、どうしたんかなーって見てたら寺がおかしいって話聞いて」
「うん」
「そこの寺は何年か前に震災が起きた時、皆が避難したりしてたところで、避難中に一部火事になったこともあって」
「……」
「その燃えた場所が、子供がいたところらしいんだよ」
「あ~……」
「全部で十七人いたけどみんなそのまま間に合わなくて焼け死んで、それから時々焦げ臭い匂いがするとその時の子供たちがうろついてるって言われるようになって」
「……ああ」
「寺に行ってみたら、皮膚が焼けてずり落ちたりしてる子供たちが寺の周りをうろうろしてるのを見つけてしまったっていう夢。起きた時はすごい怖かったんだけど、思い出す分にはそうでもないな」
「聞く分には結構ダメージがある」
「食べ終わってからすればよかったな」
「そうだな。お前はもっとそのあたりを気遣えるようになったほうがいい」
「俺は平気だからさ」
「俺は平気じゃない」
「ごめん」
「生物が肉体的にどうにかなるような場面のある話をするときは今後あらかじめ聞いてからにしてください」
「忘れそ」
「ジャンルを先に行ってくれ」
「んはは、わかった、ジャンルな」
「以後気を付けるように」
「はーい」

森の奥の寺の夢

2023.02.22