大和は何にするんだ」
「今日はサバの味噌煮食べたいから和風日替わり。征十郎は中華?今日はあんかけ焼きそばだって」
「ここのあんかけ焼きそばは麺がぱりぱりじゃないから食べない」
「ああ~こだわり~」
「ナポリタンにしようかな」
「珍しいな」
「ここのは太麺で美味しいって田中が言ってたんだ」
「誰?」
「副会長」
「ああ……?眼鏡の人?」
「それは会計」
「……いっつも派手なピンつけてる子?」
「それは書記」
「あといた?……あ、まってもしかしてあのガタイの良い奴?」
「それだな」
「うわ、顧問かなんかかと思ってた」
「制服着てるだろう……」
「そだっけ。なんか高校生の顔じゃなくない?」
「本人には絶対言うなよ、気にしてるから」
「気を付けとく。サバ食べる?」
「少し。……美味いな」
「生姜が多めに入ってるのが最高」
「そうだな。ほら」
「ん、ありがと。……うま!すごいモチモチ~!田中に美味しかったって言っといて」
「ふふ、言っとく」
「そういや今日は征十郎じゃなくて黄瀬が出てきた」
「そうなのか?」
「この前みんなに会わせてくれただろ」
「そうだな」
「黄瀬が記憶にへばりついてる」
「言い方」
「あいつなんであんな質問攻めしてくんの」
「まあ好奇心だろうな」
「好奇心で俺のスリーサイズとか就寝スタイルとか風呂でどこから洗うかとかまで聞く?」
「……」
「セクハラされてんのかなって考えたよ」
「ごめん」
「征十郎のせいじゃないけどさ~、またうっかり会っちゃったときにボコボコにしても許して」
「許す」
「ありがと」
「それでどんな夢だったんだ」
「ああ、いろんな石鹸が売ってる店で黄瀬に絡まれる夢と口ん中に黄瀬の指突っ込まれる夢を見たんだけど」
「聞きたくなくなってきた」
「やめとく?」
「……いや聞く」
「一個目が石鹸専門店みたいなとこでハンドソープ選んでるんだけど、俺は蜂蜜入りのやつが欲しくて探して。甘くて美味しそうなにおいのやつがあったからそれにしようとしたら、いつの間にか背後に黄瀬がいて『俺にも見せて』っていうか渡したのよ」
「うん」
「そしたら『俺もこれ買おっかな』とか言ってきて、黄瀬と同じものを使いたくないから別の蜂蜜入りにしようと思って離れようとしたらお揃いの使おうとか俺たち友達だから仲良しの証とか恐ろしいこと言いだして」
「鳥肌立ってきた」
「俺は仲良しなつもりもなんなら知り合いのつもりもないから、嫌ですって言ったの」
「偉い」
「でも黄瀬はなんでなんでどうしてって喧しくて鬱陶しいからさっさと別の探そうとそこから離れたんだけど、黄瀬はついて来るんです」
「……」
「俺が怒ってると思ってるらしくて『やだ~怒んないで~』てごちゃごちゃなんか言いながらついて来ててさ……無視して石鹸探すけど見つからなくて店員に聞いたら『そこにないならないですね』て言われるし、うんざりしてたら棚が崩れて倒れ始めたから巻き込まれないように外に出た」
「黄瀬は?」
「いつの間にかいなくなってた。で、外は雪が降ってて、雪だなーって見てたらちょっと離れた場所に停まってるドでかいトラックの後輪が一個外れかかってるのを見つけてしまいまして」
「うん」
「外れそうだなーって見てたらトラックが動き出して、予想通りタイヤも外れて。すごい勢いで飛んでったタイヤがちょうど俺の向かいの二階建てのビルに突っ込んでって、一階のフロントガラス全部割れちゃうんだよ。そしたら、ん~、巨大水槽割れた感じの物凄い量の水が流れてきて」
「ビルから?」
「ビルから。ガラス片の混じった大量の水に溺れて目が覚めました」
「とんだ悪夢だな」
「ほんとだよ。じゃあ二個目話してもいい?」
「……どうぞ」
「薄暗い学校にいて、外も暗くてよく見えない。教室の中は机が何個かしか並んでなくて、あとは後ろの方でごちゃっと適当に積み上げられてる。で、俺は椅子に座った状態で後ろ手に縛られてんだけど」
「えっ」
「目の前にはスーツ着た黄瀬が立ってて」
「待ってくれ」
「はい」
「なんかすごい嫌な予感がしてる」
「はい」
「……お前は口に指を入れられるだけか?」
「うん」
「……続きをどうぞ」
「俺と黄瀬の他にも何人か人がいて、遠巻きにこっちを見てる。縄を解いてくれって言っても黄瀬は黙って俺を見てるだけで何も言わないんだ。それでどうしようかなって思ってたら黄瀬が急に俺の口に指入れてきて」
「ああ……」
「びっくりした俺はまあ反射的に口閉じようとして指噛んじゃって、それでも指抜かないから本気で噛みました」
「よし」
「噛みちぎる勢いで噛んでたらもう口の中が血の味で気持ち悪くなってきて、ぺって吐きだしたら黄瀬が『ひどいことしないでほしいんスけど』って笑っててゾッとして目が覚めました」
「……お前は黄瀬をサイコパスかなんかだと思ってるのか?」
「サイコパスとは思ってないけど頭おかしい人だとは思ってる」
「すごい複雑な気分だ」
「友達だもんな。なんかごめんね」
「いや、あいつも悪いから気にしなくていい」
「……なんか元気なくなってきた。今日部活見にいってもいい?」
「ああ、顧問に伝えておく。終わったら何か食べに行くか?」
「行く!」
「はは、元気になったな」

黄瀬涼太のせいで悪夢みたいになってる夢

2023.02.16 | ※黄瀬涼太は大好きなキャラの一人ですが、ド変態サイコ野郎だと思っていることは否定しません