「日替わり和風定食。大和は?」
「じゃあ俺洋風定食。そーいや今日、お前がなんか祀られてる夢見た」
「なんて夢見てるんだ」
「多分一昨日観た映画のせいだと思うんだけど、俺森に住んでて」
「森に」
「白雪姫に出てくるタイプの森」
「リスとかうさぎとかがいる」
「そ、小動物いっぱいいそうなやつ。その森でちっちゃい頃の征十郎と出会うんだよ。俺もちっちゃかったけど、俺よりもちっちゃくて可愛かった」
「あんまり嬉しくないな」
「お前がどこ住んでんだか知らないけどよく森で会って遊んでて、将来結婚しようね(はーと)みたいな約束もしたんだけど、征十郎が森を離れなきゃいけなくなっちゃってさあ」
「なんと」
「お前が絶対戻って来るからっていうから俺は律義に何年も待ってるわけよ」
「健気だね」
「ほんとだよ。そんで何年経ったんだか知らねーけどだいぶん成長してから、直感的に征十郎が戻って来たって分かって迎えに行ってた」
「大和の直感は夢でも冴えてるのか」
「あはは、どうだろうな。で、本題に入るんだけど」
「本題」
「お前が祀られてた話」
「ああ……」
「住んでる森抜けてった先に馬鹿デカいレトロな感じのデパートがあって、そこがプレオープン?見学オープン?みたいなのしててさ。一階部分のみ見学できますってことでデパート前にうじゃうじゃ人が居て」
「急に現代的だね」
「街も何もなく急にデパートドン!だからな。流石夢だわ」
「それで?」
「で、俺の直感が征十郎はここにいるっていうわけよ。人混み掻き分けて立入禁止の看板蹴飛ばして階段上って、追っかけてくるスタッフと警備員を階段から蹴落として」
「凄い大和感あるな」
「まあ俺だからな」
「というか俺はデパートで祀られているのか」
「まあそういうことになるね」
「有難みが薄い」
「はは、確かに」
「じゃあ続きをどうぞ」
「あ、はい。普通デパートの階段って全部繋がってると思うんだけど、まあ夢ん中だから繋がって無くて、各フロアごとに階段の場所が違うんだよ。で、征十郎は五階にいるわけ」
「遠いな」
「ほんとだよ。駆けずり回って階段探して上って警備員ぶん殴って気絶させたり謎の吹き抜けから突き落としたりしてて」
「死人が出てる」
「まあ夢だから。そんでまあ五階の階段を見つけて上ったんだけど五階はデパートっていう感じが全然しなくて、しなくてっていうかどこからどうみても教会だったんだよ。ステンドグラスだし祭壇っぽいのもあるし神聖感満載っていうか、長椅子もずらーーーって並んでてマぁジで馬鹿でかい教会で、どこからどう見ても絶対に良からぬ宗教の拠点でさ」
「へえ」
「そこにお前がいんのよ」
「おっと?」
「今くらいにまで成長した感じで祭壇の前に立ってて、ステンドグラス越しの日光浴びてる赤司征十郎この世のもんじゃなかったぜ」
「ええ?」
「怖いくらいめちゃめちゃ綺麗だった」
「……」
「あは、征十郎かわいい」
「うるさい」
「んふふ、でね、征十郎はその見るからにヤバい宗教内でヤバい感じに祀られててここから出られないって言うわけ」
「ヤバいしか分からないんだが」
「大丈夫、俺もヤバいってことしか分かんなかったから。で、ここから始まるのが逃避行なんですが」
「まだ続くのか?」
「もうちっと続くんじゃよ」
「終わらないやつだな。それで?」
「デパートから征十郎連れて脱出するんだけど、それがステンドグラス突き破って地面まで落下っていうダイナミックな感じで」
「大和じゃなかったら死んでるな」
「俺でも死ぬよ。征十郎は俺をなんだと思ってんの?」
「チタンかアルミニウム合金」
「金属。そこはスーパーマンって言えよ」
「スーパーマンっていうよりも戦闘機だろう、お前は」
「褒めてる?」
「概ね」
「ならいいです。えーと……あ、それで落ちた後、適当にその辺の車にのってなんか分からんが征十郎がエンジンかけてさ」
「盗難?」
「まあまあ。運転は俺なんだけど、まあ当然免許無いんだよね」
「盗難車で無免許運転」
「どこに向かってんだか分かんないけどとにかくガンガン走ってて、追っかけてくるパトカー撒いたり事故らせたりしてて。あれ、先月観た映画みたいな感じ」
「ああ……車がやたら爆発するやつ」
「それそれ。まあそんな感じで逃げてる途中で目覚めちゃったから結局どこに向かってんだか最後まで分かんなかったわ」
「またよく分からない夢を見たな。旅行にでも行きたいのか?」
「あ~旅行は行きたい。テスト前っていつまで部活やんの?」
「一週間前までだな」
「じゃあ金土で二泊三日旅行しようぜ」
「テスト前日に?」
「余裕だろ、お前テスト勉強しないじゃん。明日までにどこ行きたいか考えといて、俺も考えとくから」
「猶予が無さすぎる」
「て言いながらしっかり決めてくんのが征十郎なんだよな。楽しみにしてるわ」
「ご期待に沿えるようしっかり考えるよ」
赤司征十郎が祀られていたから攫った夢
2023.02.08